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<幕内観戦記>

10月11日に4日目、5日目を開催。大関昇進を狙う関脇の春ノ翔と美空富士の桐壺勢、新入幕の磯ノ海コンビの大神楽と磯光、これに平幕の角武蔵を加えた5人が5戦全勝とした。横綱若ノ嶋は連勝したものの、横綱鞍ノ城が5日目に敗れて2敗目を喫した。

新横綱としての緊張感からか、初日から本来の出足が見られない若ノ嶋。4日目は新鋭磯昇との初顔の一番。まだ足の骨折が完治していない磯ノ海親方が「磯昇!がんばれ!」と人一倍大きな声援を送る。立ち合いにやや立ち遅れた若ノ嶋だったが、そこから攻勢に転ずる。左から寄り立てるが時計回りにこれを凌ぐ磯昇。のど輪の機会を伺う磯昇だが、若ノ嶋は厳しい攻めでこれを許さず大相撲となる。しかし、最後は若ノ嶋が左からの下手投げをみせて磯昇を退けた。何とか勝って「ホッ!」と胸を撫で下ろす錦風親方。「これで少し体がほぐれたんじゃないかなぁ!無類の稽古好きだから、こういった長い相撲を取ることで本来の調子を取り戻してくれるといいんだけどなぁ!明日は照の王だしな!」と語る錦風親方。錦風親方が語ったように5日目は早くもライバル照の王との対戦。先場所の唯一の黒星はこの照の王との一番だった。「照さま、嶋コーの関係なんだろ?」と友砂理事長。「違うよ!ワンちゃん、シマちゃんだよ!でも、今場所は横綱と関脇だから、『てる!』って呼び捨てにしたっていいくらいだけど、若ノ嶋は人格者だからそんな呼び方はしないよ!番付に差があっても、2人は永遠のライバルだからね!」と錦風親方。そのライバルに2場所続けて負けるわけにはいかない。「いい相撲を見たいね!」と鹿賀乃戸親方。しかし、勝負はあっけなく、立ち合いに左を差した若ノ嶋がすぐさま下手投げで勝負が決した。「ちょっと歯ごたえがなさすぎましたね!」と九十九親方。徐々に調子が上向いてきた若ノ嶋。今後の相撲に期待が出てきた。

序盤にまた星を落とした鞍ノ城の4日目は水晶嶽。今場所の新弟子の四股名の流行は「○ノ城」。鞍ノ城にあやかってと思いきや、大相撲秋場所で怪物として旋風を巻き起こした「逸ノ城」にあやかってのものらしい。「逸ノ城より鞍ノ城の方が先なんだぞ!しかも、鞍ノ城は紙相撲協会で押しも押されぬ日下開山の横綱なんだぞ!」と言いたげな勝間田親方。その横綱らしい相撲で水晶嶽を鋭い出足で圧倒して簡単に正面土俵に寄り切った。しかし、5日目に初顔の千代ノ虎に対して、立ち合いにすぐと左を差されて寄り切られた。「やっちまったよ〜!」と鹿賀乃戸親方。「あ〜!やってしまった!」と意気消沈の勝間田親方。鞍ノ城は5日目を終えて3勝2敗と苦しい前半戦の結果となった。

両横綱に匹敵する、いやそれ以上にいい相撲を見せているのが春ノ翔と美空富士。先場所悔しい思いをした分を取り返すかのような隙のない相撲を見せた。春ノ翔は大江錦、玄武岩といった実力者を難なく下し、美空富士も先場所苦杯を舐めた阿古耶川、磯昇を一蹴して、ともに5連勝とした。これまでの相撲を見る限り、大関に向けて死角なしといった印象の相撲っぷり。桐壺親方も終始ご機嫌の様相だった。

その2人にとって怖い存在になりそうなのが磯ノ海部屋の新入幕の大神楽と磯光。大神楽は先場所十両で全勝優勝して、今では磯ノ海親方の一番の期待力士。しかも「磯光も玄武岩以上の期待力士なんだよ!」と磯ノ海親方が言うように、2人への期待は相当なものがある。その実力を計る試金石とも言える元関脇獅子桜と大神楽が4日目に、磯光が5日目に対戦したが、ともに相手にしない相撲でこれを退けた。「友砂さん!次の対戦相手を誰にするかまた悩むところだね!頼みますよ!」と鹿賀乃戸親方。このまま行けば、今後、春ノ翔と美空富士との対戦が組まれることになりそうだ。優勝争いがこの4人で展開されることがないように、鞍ノ城、若ノ嶋の両横綱には最後まで優勝争いに加わって場所を盛り上げてもらいたいところ。

一方、今場所、大関から関脇に陥落した鬼ヶ嶽と照の王は、鬼ヶ嶽が4日目に照の王に敗れて4敗目を喫して場所後の大関復帰の道が閉ざされた。また、照の王も5日目を終えて2勝3敗となり、厳しい星勘定となっている。

 

<十両観戦記>

再十両の場所でリベンジをかける初戸が全勝で単独トップに立った。一敗は響岩、鬼無双、瑞豊、晴皇、磯ノ龍の5人。
初戸は金剛山、岩武蔵に対して左を差す安定した相撲をみせ白星を重ねた。新十両の場所と違ってここまでは落ち着いた取り口を見せている。場所前、「とりあえずは勝ち越しが目標だよ」と控え目だった錦風親方もこの五連勝は予想していなかったに違いない。ぼほ勝ち越しも見えて後半戦の優勝争いに留まるためにもこれから対戦するであろう虎風や磯ノ龍、他の一敗勢を撃破していかなければならない。まだまだ気は早いかもしれないが、ここをクリアすれば若ノ嶋も成しえなかった十両優勝も見えてくるだろう。また同じく3連勝発進だった同部屋の栃谷は連敗で足踏み。かたや、先場所から好調を持続する響岩は五日目全勝の鬼無双に左を差し勝ち一敗を守り、また波士頓も白星先行で錦風勢は順調な滑り出しとなった。鬼無双とともに元気のいい相撲を見せているのがともに幕内復帰を目指す瑞豊。四日目は激動山に対し土俵際で逆転の投げを食ったが、大ノ湖には慎重に捌いてこちらも一敗をキープ。今場所は強力な桐壺、磯ノ湖勢がいないのでこの間隙を突いて元幕内組が意地を見せて優勝してほしいところではあるが…。そうは言っても不気味なのが桐、磯勢。虎風、剣灘あたりはまだまだ実力は未知数だが確実に星を稼いでくるだろう。剣灘は危なげない相撲をみせ連勝で白星を先行、剣灘は麻縄部屋のため今後虎風や他の桐壺勢との対戦もあればこちらも楽しみなところ。磯ノ海部屋の中では一人どっかと腰を据えている十両8場所目の磯ノ龍。慈乃光、鹿富士を下して二日目から四連勝とやる気を見せてきた感じ。十両に上がるとあっという間に幕内に昇進していく弟弟子を尻目にこのままではまずいと悟ったのか遂に尻に火が付いたのかもしれない。要注意までとはいかないかもしれないが、次場所は幕内を狙えるところまで番付けを上げておきたい。今場所も五日目を終って四勝一敗と波に乗るベテランの晴皇に対し、先場所と同じく一勝四敗の鹿富士。「晴皇じゃなくて鹿富士に勝ってほしいんだよー、鹿富士と成績取り替えてもいい?」と鹿賀乃戸親方が嘆くほど鹿富士の調子が上がってこない。四日目にようやく虎風を寄り切って初日を出したが連勝とはならず。場所前の連合稽古では若ノ嶋にも勝つなど本来なら優勝争いに加わる力は十分あるはずだけに親方も歯がゆい思いは隠せない。中盤以降は勝ち越しを目指す相撲に方向転換となるが盛り返しにも注
目となる。

 

<幕下観戦記>

幕下は三日目を終って勝ちっぱなしは連覇を狙う嶺峰、江戸の若と江戸の菊の江戸川勢、新幕下の紫藤、山口の5人となった。

二場所連続優勝を目指す嶺峰は鬼大海と対戦。あまり目立たないが嶺峰は第133回場所序二段の二日目から16連勝中でほぼ一年間負け知らず。四場所ぶりの十両復帰をかける鬼大海との対戦は嶺峰が立合いから出足よく前に出て寄り切りで破り三連勝とした。「あとは全勝優勝で十両昇進だ~」と一人心の中で呟く勝間田親方だった。ともに二連勝で好スタートを切り江戸川親方を喜ばせた江戸の若と江戸の菊。江若は鹿乃海と対戦してまわしを取らせず突き落としで下し勝ち越しを決めた。西七枚目ではあるが全勝すれば一気の昇進もあるのでこの勢いを繋げていきたいところ。江菊は強敵の虎の国との一番。実力的には虎の国だろうが、その予想を上回る厳しい攻めを見せた江菊がのど輪を入れて圧倒。「おー、勝ったよ。」と嬉しさの中にも一番驚いていたのが江戸川親方だったのは言うまでもない。初日に富嶽を破って勢いに乗る紫藤は今や、元学生横綱の面影が全くなくなった伊沢を難なく寄り切って力の差を見せた。四日目は江戸の菊が相手かどうかは微妙だが桐壺部屋にまた一人刺客が加わったことは間違いないだろう。付け出しの山口が大青木を破り幕下の地位を確保。香具山親方も「よかった~、勝ち越せたー。」と安堵の表情を見せた。山口とともに付け出しで期待された九十九の那由多だったが三連敗となり幕下からの陥落が決定的となり廃業が決まった。この日参加できなかった九十九親方も期待をかけて送り込んだはずだったが力を発揮できずに去ることになるが、この敗戦を糧に更にスカウトにも熱が入ることだろう。

<三段目観戦記>
三段目では東筆頭の磯ノ嵐が電幕に差し勝って三連勝。早くも幕下昇進を確定させた。敗れた電幕もまだ昇進の可能性は十分、鹿の砲、桃乃河あたりとの争いになってくるだろうが、とりあえず四日目には勝ち越しを決めておきたいところ。英部屋では活躍目覚ましい英山田が同門の鹿三村を下し三連勝。取組前は「どっちかといえば鹿三村に勝たせたいな~」と言っていた鹿賀乃戸親方だったが英山田の圧勝となった。
まだ気は早いかもしれないが、幕下昇進となれば各段一場所通過での偉業となる。そして英森田も江戸黒田を寄り切って同じく三連勝、英浜田も2勝1敗と白星を先行させた。また、このところいま一つ伸び悩んでいた?虹大龍と、ここまで左差しだけで上がってきた冬牡丹らが順調に星を重ねてきて残り二日楽しみな存在になってきた。

<序二段観戦記>
序二段は全勝が三人となった。相変わらず他を寄せ付けない圧倒的な取り口を見せている磯日ノ丸。今場所も断トツの優勝候補で、九十九親方とともに欠席の磯ノ海親方だったが居てもいなくても関係なし。左百騎頭を全く問題にせず寄り倒しで退け序の口からの連勝を8に伸ばした。そして四日目に対戦が組まれそうなのが英岩田。初日の江坂に続き同部屋の長居をも下し三連勝。序の口では負けているので何とか先場所の借りを返したいところ。友砂部屋の太刀鳳は鷲ノ海を土俵下まで吹っ飛ばす豪快な相撲を見せた。残り二日、磯日ノ丸の独走を許さないためにも英岩田、太刀鳳には意地をみせてほしいところだ。

<序の口観戦記>
序の口は友砂の市ノ花と丸の二人が揃って敗れ、全勝は十勝桜、剣竜、魁電、明ノ城の四人となった。長らく続いた山桜部屋の百騎頭軍団も一段落か、新たに北海道地名&桜シリーズに突入の模様。その中で十勝桜が市ノ花に左を差される苦しい展開から逆転の押し倒しで勝って三連勝。かたやもう一人の日高桜は白星をあげることなく惜しくも退会。今場所の本命となりそうな麻縄部屋の剣竜と岩風部屋の魁電がともに寄り切りでストレートでの勝ち越しを決めた。早くも高い潜在能力を見せている二人だが桐壺勢との対戦も今から待ち遠しいところだ。春日根では明ノ城が北横岳を押し倒しで破り優勝争いに残った。この活躍に「久々に出したのに三連勝するんだから大したもんだよな」と感心の桐壺親方。確かに育成会を席巻する磯ノ海の力士に勝つのだから流石といったところ。そして初日に北横岳に勝った隆の城も佐世保を寄り切って勝ち越しまであと一勝とした。春日根親方が練馬国技館に顔を見せる日も近そうだ。

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